刀には刃文がある。刃文は千差万別で刀の顔です。刀は元来は武器である。その武器が芸術品だといわれるのは、それぞれに個性があるからです。刃文の持つ多様な個性を見分けると同時に、これを覚えなければならないのです。その覚え方が正しくなければ狂ってしまう。だから良い先生を選び正しい教え方をしてもらい、正しくその個性を覚えるというような指導をしてもらわなければならない。かつては、正宗の特徴、村正の持った特徴の勉強をした。これは駄目です。正宗の特徴よりも先に鎌倉時代の相州物はどういうものかということを、覚えなければならない。室町時代の刀というものはどういうものかということを覚えると、村正であろうと、祐定であろうと平安城長吉であろうと、その時代のものをはっきりとらえられる。個々の一人一人の鍛冶の特徴や、くせを小さく覚えていたんではとても追いつかない。その時代のその系統の、そういう特徴をしっかりと把握するということ。このように基礎を身につけるためには書物を読む。そして刀を見る。この繰り返しをやっていく。